ディアナは、昔から欲した大抵の物は手に入れることができた。

 綺麗なドレスに、大きな宝石があしらわれたネックレス。

 音楽が聞きたいと言えば、国で一番の楽団が城へ呼ばれ、いつものお菓子に飽きたと言えば、次のティータイムには異国の珍しいお菓子が並んだ。


 それらは全て、自分がこの国の王女であるからだ。ディアナは昔からそれを理解し、その上であまり反感を買わない程度にわがままを言ってきた。

 家族からは愛され、地位のお陰で誰からもチヤホヤされる。きっと、これ以上ないほどに満たされているのだろうと思う。


 だが、そんなディアナにも叶えられないことがあった。

 ──隣国の第一王子の妃になりたい。

 国同士の交流が盛んなため、昔からちょくちょく訪問してきたイルヴィス。初めて会った時のことはさすがに幼すぎて覚えていないが、物心ついた時から、ディアナは彼のことが好きだった。

 肩の辺りで切りそろえられた金髪に、宝石のような緑の瞳。澄ました表情は少し怖そうな感じがするのだが、ディアナたちと話す時は幾分か和らぐ。ディアナは彼の全てが大好きで、微笑みかけられた時にはドキドキして仕方なかった。