昔から可愛がってくれたイルヴィスが、誰かのものになってしまうという事実が受け入れ難く、自分から遠い存在になってしまうことが悲しくて仕方がなかった。

 全く知らない女がイルヴィスの婚約者なのだという事実を目の前にして、耐えきれず逃げてきてしまった。


 要領を得ない話し方ではあったが、内容はだいたいそのような感じだった。

 その時、話を聞いたイルヴィスは少しだけ嫌な予感がした。


 幼い頃から交流のあるディアナのことは、ほぼ妹のように思っている。自分によく懐いてくれたディアナは確かに可愛らしく、実の弟たちより本当のきょうだいらしいと思ったほどだ。


 それ故、彼女の性格もよく知っていた。


 あまり世間を知らない彼女は、いつもどこか危なっかしい。

 気に入らないことがあれば癇癪を起こすか塞ぎ込むかのどちらか。それだけならまだマシだが、気を取り直した後は「何としてでも思い通りにしよう」考えるのか、突拍子もない行動に出ることもある。


 ディアナは、突如現れたアリシアの存在が気に入らない。恐らく気に入らないと泣きわめいているだけに留まらず、気持ちが落ち着いた後は、何らかの方法でアリシアに危害を加えようとするのではなかろうか。