「まあ、それもそうですね。だけど、それだけではありません。カイ様は、先ほどわたしがイルヴィス殿下のことを考えてしまっていた時、『妬ける』とおっしゃっていました。でもその表情がちっとも悔しそうではなかったことに、ご自分で気がついていらっしゃいますか?」



 もちろん彼が嫉妬のような表情を人に見せないだけなのかもしれない。

 だが、アリシアは彼がそうではないということに気づいていた。



「カイ様が本当に好きなのは、わたしではありません。あなたが本当に好きなのは──恋をしている相手は……」



 アリシアはスっと息を吸って、その人物の名を口にする。



「妹の、ディアナ王女……なのではありませんか?」