「はああ……何度見てもやっぱり綺麗ですね。海」



 日光を浴びてキラキラと輝く、グラデーションがかった青い海を目の前に、アリシアは感動してため息を漏らす。

 遠くから見る海も美しいが、やはり近くで見る方が、この国の海の特別さがわかる。



「また海の中に入ってみるか?」


「ふふ、前回大変なことになったので止めておきます」


「イルと貴女は派手に転んでいたもんな!」



 まあ正確に言えば、転んだのはアリシアで、イルヴィスは転ぶアリシアを受け止めることに失敗して巻き込まれたのだが。

 あの時のことを思い出すと顔が少し熱くなる。思わずうつむいて、ふうっと息を吐く。

 すると、アリシアの目にキラリと光るものが飛び込んできた。

 しゃがんで拾い上げてみると、青い石のようだが、光にかざすと少し透き通っている不思議な物体だった。



「ああ、それはシーグラスだな!」



 アリシアの手元を覗き込んだカイが言う。



「シーグラス?」


「波にもまれるうちに角が取れ、丸みを帯びた形になったガラスの欠片のことだ。ほら、ここにもある」


「ガラスなんですね、これ」


 言われてみれば表面の触り心地は磨りガラスに近いような気もする。