第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II



「まあでもそうね。一つアドバイスすると……恋敵のことはもう存在自体無視しちゃいなさい。それぐらいの気持ちで良いんじゃないかなってあたしは思うの」


「無視、ですか?」


「アリシアちゃんのモヤモヤドロドロした嫌な感情は、恋敵(ディアナ王女)がいて、彼女のことを考えるから芽生えてしまったものでしょ?ただただ好きな人のことを想う気持ちは、温かくて心地よいものだもの」


「温かい……」


「そりゃ苦しい気分になるときだってあるし、相手が自分と同じ気持ちじゃないと寂しいし辛いかもしれない。だけどそれ以上に幸せな気分になれるの」



 そうかもしれない。目を伏せ、微笑を浮かべるレミリアを見てアリシアは思う。

 前世で大好きだった少女漫画でも、今世で大好きなロマンス小説でも、恋をしている女の子たちは皆幸せそうだ。だから、自分は恋愛に憧れていた。

 嫉妬心のような、嫌な感情のことに気を取られていたから、暗い気持ちになってしまっていたのか。


 アリシアはカップを置いて姉の前に立つ。



「ありがとうございます姉様」


「顔、少し明るくなったわね」


「はい。でも、やっぱりディアナ王女のことを考えないというのは難しいかもしれません」



 弱気な言葉とは裏腹に、アリシアの声はどこか力強い。