(ニーナさん……)



 一行目に小さくて綺麗な字で、どうしても伝えたいことがあって手紙を書いたことと、書いた手紙を確実に届けてもらうためデュランの名を借りて出したことが書かれていた。

 そういえば、旅立つ前にニーナには会っていなかった。お土産は何が良いか聞いておけばよかったか。


 そんなことを思いくすりと笑う。が、続きを読むうちにその笑みは消えた。



「……え?」



 その続きは、少しも予想していなかったもので、思わず間の抜けた声をもらした。アリシアは再度その文に目を通す。

 次第に手紙を持つ手が震えてくる。




『ルリーマ王国のディアナ王女は、漫画でイルヴィスの妃になったキャラです』




 前世でアリシアの何十倍も『黒髪メイドの恋愛事情』を読み込んだニーナからもたらされた、知らない情報。

 そもそも、アリシアはディアナがあの漫画に登場したキャラクターであるということ自体が初耳だ。ニーナの手紙によれば、番外編のみに登場したキャラクターらしい。



(つまり……わたしがストーリー通りにニーナをいじめ、婚約破棄されていたら、彼はディアナ王女と──)