レミリアは注ぐ紅茶の量をカップの半分くらいで止めて、息をつく。



「まあ、この子に元気に生まれてきてもらうためなら何でもするけどね」


「……なら、僕もレミリアさんが紅茶を飲めない間は飲むのを止めようかな」



 何を思ったのか、エドモンドがポツリと言った。



「紅茶だけじゃなくて、お酒とか、レミリアさんが飲んだり食べたりしたいのに我慢しなきゃいけないものは、僕も我慢する」


「エド様?」


「だって、レミリアさんだけ我慢するなんておかしいだろ?それに、僕はレミリアさんと同じものを食べたりして共有できるのが一番嬉しいから……」


「っ!」



 レミリアは驚いたように目を見開き、それから頬を桃色に染めてそっぽを向いた。



「す、酸っぱいものしか食べられなくなって、毎食レモンばっかりになってから後悔しても遅いからね!」


「望むところだよ。……まあ、レモンばっかり食べてたりしたら、栄養面の問題でさすがに止めるけど」



 そう朗らかに笑うエドモンドに、レミリアは「もう……」と怒ったような呆れたような声を出すが、口角は嬉しそうに上がっている。



(ふふ。ご馳走様です)



 相変わらず仲睦まじい姉夫婦の様子を微笑ましく思いながら、アリシアは忘れ物をしたと適当に嘘をつき、二人の邪魔にならないようこっそり部屋から出た。