風が。




 殴られ蹴られて出来た、傷にしみた。





 屋上に。



 僕は一人で、あお向けに寝転んでいた。

 腫れて、半分ぐらいしか開かない目を無理やり開けば。

 かすんだ目に写る初夏の空は、憎たらしいほど蒼かった。



「く……そ……っ!!
 ててててっ!」

 呟いただけなのに、あごが、ガクガクして、痛む。

 ……いつだって。

 いつだって、そうだった。


 僕は昔から、よく。

 ちっちゃい、だの。

 かわいい、だの。

 男としては、あまり嬉しくない言葉で、しょっちゅう女子にかまわれる。

 それを、どう、誤解するのか。

 僕がモテている、とやっかむんだ。

 今までだって、それで散々な目に遭って来た。

 あまりヒドいので、暴力とは無関係で、キレイな服選びで1日を終える、女のコ達が、本気でうらやましいときもある。

 高校生になって、田代美幸(たしろ みゆき)が僕の周りをうろうろしだした頃から、集団で殴られるコトも多くなったから。

 余計に羨ましい、と思うのかもしれない。

 美幸は、アタマが良くて、キレイだったから、本当に良くモテた。

 ムード・メイカーで。

 いつも同じクラスの吉野を子分みたいに引き連れている、栗田もまた。

 美幸のコトを片思いしていたから、僕のコトは、キライなんだろう。