ビールの冷たさに寄った水滴が指に落ちる。

「いえ、出来てません」

どーん、とお腹に響く花火の音と八橋さんの声が被った。

開いて、散っていく。
確かに、花の火。でも花びらは一枚ずつ取ることはできない。

普通、花びらは、取られるためにつくわけじゃないか。



花火が終わって、八橋さんはわざわざ私たちを駅まで送ってくれた。
人通りもまだ多いのに。

「あ、電車来てる! 八橋さん、ありがとうございました! 正武、またね!」

電光掲示板を見るなり、麦前は早口で挨拶をして、改札を抜けていった。
誰も返事をせずに行ってしまった……。