エントランスの床はつるつるで、エレベーターの中は良い匂いがした。
「こんなところに住んでたら、そう呼びたくもなるね」
「いや、主任が八橋さんのこと王子って呼んでるのは大学の時かららしいよ。ほら二人とも慶蘭大学じゃん」
「大学の時からここに一人暮らしを……?」
「まさか」
エレベーターが静かに開いた。先に、八橋さんがいた。
「こんばんは」
ワイシャツ姿だった。それすらも景観に合っていて、屋台の食べ物を持った自分がエレベーターをおりることすら許されないように感じる。
そんなことお構いなく、麦前はおりた。



