『いや、家が騒ぎになってたから、俺も心配になって聞いただけ。そこに居るならまあいいや』
「そんな、てきとうな」
『セイちゃんのことよろしく』

信号待ちとかで、ばったり隣に立った人と結婚できたら良いですよね。

私が言った言葉だ。
何故それを今、思い出すのだろう。

『何を捨てても、芹ちゃんのとこに行きたかったんだよ』

多分、と付け加えられる。

じゃーねー、と軽く挨拶をして切られた。

私のところに。
どうして。
隣に立ったのは。
何を捨てても?

『元気が、出ると思って』

そうだった。
八橋さんは、元気が無かったのだった。