話は大体分かった。

「そこに、八橋さんが?」
『ここら辺の世代、女性が多いのと殆ど家庭に入ってんの。そこでセイちゃんに白羽の矢が立った』
「生贄ですか。それは逃げるのは正当ですね」
『そっか、セイちゃんは芹ちゃんのとこに逃げてんのね』

蔵馬さんは静かに笑っていた。

「私、一度も来てるなんて」
『一回も否定してないでしょ』
「……八橋さんを連れ戻すんですか?」

結局、折れたのは私の方。

交差点で信号が変わるのを待つ。
思えば、ここで八橋さんに声をかけられた。

横断歩道を前に、隣に立った。