林檎を食べる姿がこんなに画になる人に出会ったことがない。

みずみずしい甘さが舌に広がる。しゃくしゃくと咀嚼していると、八橋さんがダイニングテーブルに皿を置いた。

「座って食べててください、用意してきます」

そう言って、リビングの奥の寝室らしき部屋へと消えていく。
残された私は、残り六個の林檎と対峙する。

高そうな椅子に腰掛けて、林檎を食む。

北原白秋の短歌に林檎と雪が出てくるものがあったのを思い出す。

そういえば雪は降ってないのかな。
携帯で天気を調べる。

「曇りかー」
「天気ですか?」
「うん。昨日の朝はうちの方、雪が降ってたんです」