はなうらない


何を、と尋ねる前に八橋さんは顔だけ振り向いた。
明るい下で久しぶりに見る八橋さんの顔だった。

「俺が好きなの、正武さんです」

瞬きを二度。
いや、三度。
結局、数えきれない。

「え、と、これはもしかして、すぐに帰った方が良い、やつ、ですか」
「どうしてそんな片言に。何もするわけがないので、帰らないでください」

穏やかに笑っている。私も出来るならそういう風に笑いたい。

八橋さんは廊下を歩いて行ってしまう。広い玄関に置いていかれるのは嫌で、とりあえずパンプスを脱ぐ。

玄関の端に寄せて用意されたスリッパに足を入れる。