「……企むなど、断じてありませぬ」

「薄々感付いてはいたが、まさか本当に女だったとは……」

 薄々感付いていた!?

「わざと……俺を木刀で打ちのめしたのか!」

 信長は不敵な笑みを浮かべる。

「紅と同じ床でやすんだときに、男とは異なる匂いを感じ妙な気持ちを抱いた。このわしが男にそのような気持ちを抱くとは、どうしても腑に落ちなかった。そのモヤモヤした気持ちが何なのか、この目で確かめたかった」

 信長はあたしを組み伏せ、体を拘束した。

「大声を出すでない。帰蝶や侍女に気付かれてもよいのか?」

「……っ、信長様、どうか……お許しを」

「やっとわしの名を呼んだな。紅がそのようなしおらしい声を出すとはのう。男を抱いているようで、奇妙じゃ」

 信長の唇がゆっくりと落ちてきた。あたしの唇を啄むようにキスをする。

「……っ、は、離せ」

 抵抗しているあたしの両手を、左手で掴み頭上で束ねる。信長の舌はあたしの口内を弄び、右手はあたしの首筋をなぞる。

「美しき肌……。なぜ、もっと早く気付けなかったのか」

 耳の後ろに滑り込んだ手は、あたしに逃げ場を与えないようにガッチリと後頭部を押さえ、激しいキスの雨を降らせた。

 バタバタと足をばたつかせたが、信長の体と筋肉質な太股が、その動きを封じ込める。

「……お願い。やめて……。於濃の方様を裏切りたくないの」