「着いてきな」

 あたし達は月華に拘束され、埠頭にある倉庫へと連行された。

 今は使用されていない古い倉庫。
 倉庫前には改造されたバイクが並び、1台のワンボックスカーが停まっていた。女はシャッター越しに声を掛ける。

「黒紅連合総長を連れて来ました」

 女の声に、シャッターが開く。
 倉庫の中には30~40近い人数が終結し、その手には木刀や鉄パイプが握られていた。

 薄暗い倉庫の隅に、2人の男が立っていた。あたしに視線を向けると、ニヤリと口角を引き上げた。

 男の足元には、床に横たわる2本の脚が見えた。その脚はマネキンのようにピクリともしない。

 女達がサッと道を開け、1人の女の姿が裸電球の下に浮かび上がる。

「……あざみ」

「黒紅連合総長、斎藤紗紅。あたしらの縄張りを散々荒らしてくれた落とし前をつけてもらおうか」

 あたしは男の足元に転がる女が気になってしかたがない。

「美濃はどこだ」

「美濃? 優等生の姉ちゃんか。その女なら気を失ってるよ。本当はお前がああなるはずだったのにな」

 倉庫内に男達の卑劣な笑い声が響いた。

 ――あれが……美濃!?

 あたしの肩を掴んでいた女をはね除け、足で腹を蹴飛ばす。嘲う男達に駆け寄り全身でぶつかる。

 男達が蹌踉け背後に転がっていた女の姿が露わになる。制服の胸元は裂け殴られたような傷を負い、まるで壊れたマネキンのように放置されていたのは、紛れもなく姉の美濃だった……。