【紗紅side】

 深夜零時、あたしはバイクに乗り夜の公道を走る。このバイクは前総長から譲り受けたものだ。

 口煩い姉の手前、バイクはアパートには置けず喜与に預けている。

 コインロッカーに入れている特攻服も、前総長から引き継いだもの。黒い服の背中には、色鮮やかな赤い牡丹の花に戯れる黒い蝶と紫色の蝶が刺繍され、赤い文字で黒紅連合と書かれている。

 全てが、あたしの勲章。

 特攻服に身を包み、先頭を走るあたし。
 そのあとを喜与と那知、瑠乃のバイクが続く。蛇行しながら爆音を鳴らし走っている時が、サイコーにスカッとする瞬間だ。

 黒紅連合の集会場所に向かう途中、4台のバイクを取り囲むように10台のバイクが近付く。赤い特攻服が夜風に靡く。

 明らかに、黒紅連合ではない。

 そいつらは……。
 月華……!

 あたし達は猛スピードで奴らを交わそうとするが、月華のバイクは1台、また1台と増えていく。

 20台以上のバイクに囲まれたあたし達は、ついに走ることが出来なくなり、急ブレーキを掛けバイクは転倒する。

 バイクから投げ出され、アスファルトに体を強く打ち付け、無様にも道路に突っ伏したあたしを、月華のバイクが取り囲む。

「一体、何の用だ!」

 黒い改造バイクから、1人の女が降り立つ。金髪に赤い特攻服。

「あんたが黒紅連合の総長か? 斎藤紗紅だな。月華の総長がお呼びだ」

「月華に用はねぇ! あざみにそう伝えな!」

「あんたがなくても、綺麗な姉ちゃんが用があるんだってよ。早く行かねーと、あの女、死んじまうかもな」

「……姉ちゃん? まさか……美濃……?」