「こんな場所で、そんな大声出さないで下さい。それにあなた未成年でしょう。喫煙は法律で禁じられてるわ。正門で喫煙しないで」

「喫煙は法律で禁じられてる? ハン、笑わせんな。喫煙者と一緒にいることが学校にバレたら困るってか?」

 女子は私の鼻先で、フーッと煙草の煙を吐く。思わず「コホコホ」と噎せる。

「あんた、斎藤紗紅のことを知っているみたいだな」

「……斎藤紗紅は私の妹です。紗紅は今日学校に来ていません」

「妹? アイツ、学校サボッて信也のとこにシケ込んでんのかよっ!」

 女子は足を振り上げ、フェンスを蹴り飛ばす。フェンスは悲鳴にも似た音を立てた。

「ここで騒ぎを起こさないで、信也って誰ですか? あなたは紗紅の居場所を知ってるの? 私、妹に逢いたいの。居場所を知ってるのなら教えて下さい」

「居場所を教えろだって?」

 女子は煙草を地面に投げ捨て靴で揉み消し、口角を引き上げ不敵な笑みを浮かべた。

「そんなに逢いたいなら逢わせてやるよ。着いて来な」

 女子は前方に停まっている車に視線を向け、目で合図した。

 恐怖心よりも、紗紅に逢わなければいけないという思いが先行し、私は自らの意思で女子の後に続いた。