「黒紅連合って……? 暴走族なの?」

「はい。だからみんな怖がって……」

「紗紅が暴走族だなんて……。何かの間違いよ」

 女子が顔を見合わせ、眉をひそめる。

「お姉さんなのに、妹のこと何も知らないんですね。斎藤さんが総長みたいですよ」

「紗紅が……総長!?」

 思わず声を上げた私に、女子が慌てて周囲を見渡した。

「私達……もう何も話すことはありません。私達から聞いたって、斎藤さんに絶対言わないで下さいね」

 女子は何かに怯えるように、教室の中に駆け込む。

 紗紅が……
 暴走族の総長……。

 私はショックのあまり、暫くその場を動けなかった。

 ――午後の授業が終わり、生徒会の役員会を終え学校を出る。すっかり遅くなり、日は落ち校庭は薄暗い。

 正門から少し離れた場所に、1台の黒いワンボックスカーが停まっていた。窓ガラスには黒いフィルムが貼られ車高も低く、マフラーやタイヤも太くとても目立っていた。

 正門を出ると、金髪の女子に声を掛けられた。赤いサテン生地のジャンパー、黒いロングスカート。派手なメイクをし、煙草を吹かしている。

「あんたさ、この学校の斎藤って女知らねぇ?」

「……斎藤?」

「斎藤紗紅、黒紅連合の総長だよ」