テーブルの上には、夜食のお皿とペットボトルがそのまま放置されている。

「ぎゃんぎゃん喚くなら、片付けてくれればいいのに」

 お皿を掴み部屋を出て、キッチンのシンクに置く。ダイニングテーブルにはトーストと目玉焼き。お皿の横にはいつものように1枚のメモ用紙。

【紗紅、遅刻しても学校には来なさいよ。】

 また姉だ。
 ていうか、マジでウザイ。

 あたしはメモ用紙を丸め、ゴミ箱に放り込む。ゴミ箱の中には丸まった数枚のメモ用紙が溜まっている。

 姉に行動を見張られているような気がして、苛ついたあたしはガシガシと頭を掻く。

 気分をスッキリさせるために浴室で頭からシャワーを浴び、胸の膨らみに残る赤いキスマークに気付く。

 ――『さ……く……』

 信也の苦悩に満ちた切ない声が鼓膜に蘇る。

 信也の過去を知り、触れてはいけない傷口に触れた気がして、心が燻っている。

 シャワーを浴びたあたしは制服に着がえる。淡い水色のブラウス、青と白のストライプのリボン。紺色のブレザーに紺色のプリーツスカート。ブラウスは3タイプあり、その日の気分で自由に選べるが、どこにでもあるようなありふれた制服。

 リボンをつける気にはならず、丸めて制服のポケットに突っ込む。

 この制服に、中学の時は憧れていた。
 受験に合格した時、母と姉はあたしよりも喜んでくれた。

 でも今は……
 あたしが問題を起こすたびに、母は泣き姉は謝罪する。あたしにその理由を聞いてはくれない。

 朝食を食べ時計に視線を向ける。午前10時過ぎ、弁当を学生鞄に突っ込み徐に家を出る。

 学校なんてかったるい。
 休みがちなあたしは、授業のスピードについていけない。

 入学した時から、ずっと落ちこぼれだ。
 こんなことなら、進学しなければよかったと、今更ながら後悔している。