私の知らなかった克真くんの話。
窓際の一番前の席は、先生の声を拾いやすくするために担任の先生に自分からお願いしている。
映画を字幕で見たのは、目で見て理解するため。
爆音で音楽を聴くのをやめられないのは、一人になった時にふと怖くなることがあるから。
まだまだ聞きたいことはたくさんあったけれど、時間の都合もあり、「送る」といった彼の言葉に甘えて小さく頷いて、私たちは教室を出た。
彼と帰るのはひさしぶりだった。
横を向けば、きれいな横顔が視界を埋める。
気まずいわけではなかったけれど、なにか話を切り出すこともできずにいると、克真くんは「…なんか、」と言葉を紡ぎ始めた。
「最近、また聴こえなくなってきたんだ」
思わず「…え」と声を洩らすと、彼は眉を下げて困ったように笑う。
諦めの色が見えた気がして、私まで苦しくなってしまう。



