「ニーチェっていう哲学者、知ってる?」 「…いえ」 「私、彼の言葉が好きなの。さっき言ったのも彼の言葉なんだけど」 「はぁ、」 俺が一言返すたびに彼女が次々に言葉を返すので、「帰ります」というタイミングさえも見当たらない。 ああ、なんだ。 らしくもなく、放課後の教室で外を眺めていたのが間違いだった。 「下館くん」 「……、なんですか」 「きみ、空の飛び方知らないでしょう」 だから、こんな厄介な人に捕まってしまったんだ。