そんな思いを馳(は)せながらヘッドホンをとる。両耳を包み込んでいた温もりと、窮屈だった頭部が一気に解放された。
なんとなく外の音をもっと近くで聴きたくて、窓の鍵に手をかける。
「そこの少年」
背後からそんな声がしたのは、ちょうど窓を開けた時だった。
振り向けば、教室のドアのそばに国語科の旭先生がニコニコしながら立っている。
若くてきれいで授業も面白いと評判の先生。
俺も、先生の授業を聞くのは好きだった。
先生は教室に足を踏み入れると、教卓の前にある机の椅子を引いて腰かけた。
なんだ、急に。
少しだけ眉をひそめながらも、何も言わず先生を見つめる。
すると、彼女は俺の瞳をまっすぐ捕らえて口を開いた。
「―――“いつか空の飛び方を知りたいと思っている者は、まず立ち上がり、歩き、走り、踊ることを学ばなければならない。その過程を飛ばして飛ぶことはできないのだ”」



