会話は続かないけれど、目の前にいて、話しかけてしまった以上、言葉を続けようとなんとか考える。 「それ……面白かった?」 彼の手の中の、文庫本。 「面白かったよ。すきな作家の本なんだ」 「じゃあ次、わたし借りようかな」 「おすすめ」 図書室の中に入った途端、教室よりもよく冷房が効いていると思った。 冷気が肌を撫で、なんとなく泣きそうになってしまった。 隠し通さなければ。