「あの輪っかに向かって、両手をこうやって離して……」


バスケ部の出し物がある体育館につくと、橘は小学校低学年くらいの男の子にシュートのやり方を教えていた。


普段高校生が練習するゴールリング以外にも、子ども用にプラスチックのゴールリングがある。


しゃがみこんで男の子と目線を合わせ、天使の笑顔でボールの持ち方、手の離し方を教えている。


ううあああ、すき……。


ていうかどうしよう、いまうしろから見てるんだけどさ、不審者じゃない?


橘のファンに見られるか、男の子だいすきマンに見られるか、ええどうしよう。


あっ、彼女だってわかるかな。


橘の彼女かどうかを聞かれたら、とてもじゃないけど自信をもってはいと言えないな、下手すりゃ逮捕状況。


いやいやいや、まだ聞かれてない! 聞かれるまで見てよう、眺めてよう、そうしよ、しあわせを噛みしめながら。