廊下の角から、橘に話しかけるタイミングをうかがう。 すぐ近くで、橘がふたりの女子と話している……けど、まだこっちには気がついていないみたいで。 ──声、小さくだけど、聞こえる。 盗み聞きみたいでよくないかな。 でも、だって、ここにいないと……話が終わったときに見失ってしまうかもしれないし、かと言って前に出ていって橘を連れ出すわけにも行かないし。 待機だ。うん。 胸に手を当てて、吸う、吐く、吸う。 大丈夫だ。落ち着いて。