「お母さん!早く早く!」

「わかったから走らない!転ぶよ〜」

「今日はいいお出かけ日和だもんな」

あの体験から数ヶ月、私は働いていたあの病院を辞めて別の病院で働き始めました。今度は心霊現象がない普通の病院です。

あの出来事が嘘だったのではないか、そう思ってしまうこともあります。しかし、そうではないと私の目の前に見えている景色が教えてくるのです。

「ましろ?どうしたんだ?」

立ち止まった私に夫が話しかけます。私は慌てて「何でもない」と言い、歩き始めました。

夫と優には見えていないのです。電柱の陰からこちらを覗く白い服を着た女の姿を……。そう、私はあの体験をしてから霊が見えるようになってしまったのです。

あの病院は今もあるそうです。あの病棟では、未だに霊の目撃情報があるとか……。

あそこの病棟で働く看護補助員さんたちが、これ以上怖い思いをしなくていいように願っています。