私は立ち上がって、花音の両肩を掴む。

「詩音…?」

そのまま奴の方へ突き飛ばす。

奴は避ける。

けど、どこかが当たったように見えた、はずだった。

通り抜けた。

嘘でしょ?

本当に亡霊だっていうの?

「いったい…。詩音! 何するの!?」

私は口を半開きにして首を何度も横に振った。

違う。

通り抜けるわけない。

「俺のこと忘れたか? 麗夜(れいや)だよ。麗夜」

「れい、や…?」

「そうだよ、さすがにわかるだろ? …あの時、お前に殺されたあの麗夜だよ。」

「違う…。麗夜じゃない…! だって麗夜は…」

私のことを——。

——『私のことを怨まないでね? もし怨んで仕返ししに来るなら、私はあなたを嫌いになるから』