彼女は目を見開いた。


「ローはここにいたくないんじゃないの?」
「そんなことは言ってないよ」
「これからも手伝ってほしいって言ったら、嫌そうな顔をしたわ」


頬を膨らませそっぽを向く彼女は、とても長い時間を生きてきた魔女には見えなかった。


そんな彼女を見て、暖かい気持ちになる。
これが、愛しいという感情なのだろうか。


「あなたと話して、一緒にいたいって思ったんだ」


ヒトの中は恐ろしく生きにくい。
要望通りに出来なければ、捨てられる。


そんな世界よりも、期待されていないけど必要とされるここのほうが、何倍も居心地がいい。


なにより、もっと彼女のいろいろな表情が見てみたい。


だけど彼女は僕に背を向けた。


怒らせるようなことは言っていないはずだ。
照れているのだろうか。


「……名前、教えたはずよ」


僕が名前を呼ばなかったことが気に入らなかったらしい。


本当に、可愛らしい人だ。


「……ニーナ。僕をそばに置いてほしい」


ニーナは子供のような笑顔を見せた。


「いくらでもこき使ってあげるわ」


セリフと顔が一致していない。
喜びが隠しきれていない、というところか。


やはり長いこと一人で生きてきて寂しかったのだろう。


そんなニーナの心を埋められたら、なんて。