ブォーン

  ブォーン

    ブォーン

いつもならぐっすり眠ってるはずの早朝、私はなぜか不意に目覚めた。

断続的に聞こえるのは新聞配達の原付のエンジン音。

私は、布団から手を出し、目の前に掲げた。

ふふっ

思わず、声にならない笑みをこぼす私の右隣で、
「ん……」
と寝ぼけた声を漏らした彼が寝返りを打ち、こちらを向いた。

その無防備な寝顔を見て、私は、
ふふふっ
と再び笑みをこぼす。

「大好き……」

囁くように呟いた私は、左手でそっと彼の頬に触れた。

ショリ……

わずかに伸びた彼の髭が、私の手のひらをくすぐる。

無精髭までもが愛しい。


本来起きるべき時刻まで、あと2時間近くある。

もう一眠りしようかな。

そう思いつつも、今日はなかなかもう一度寝付くことができない。

すると、彼の腕が伸びてきて、そのままぎゅっと抱きしめられた。

「しゅんちゃん?」

呼んでみるものの、返事はない。

なんだ、寝ぼけただけか。

頬に感じるのは、彼の強くたくましい胸とその穏やかな鼓動。

私は、彼の腕の向こう側で左手を上げ、彼の肩越しに自らの手を眺める。

ふふっ

そこに輝く幸せの証。

8時間前にはめてもらったばかりのダイヤモンドが、カーテンの隙間から差し込んだ朝日にキラキラと7色の光を放っている。

こんなに幸せな朝は、生まれて初めて。


10年後、私は同じように幸せでいられるのかな。

一抹の不安が胸をよぎる。

ううん、大丈夫。

しゅんちゃんと一緒なんだもん。

きっと子供も生まれて、今よりもっと幸せなはず。


しゅんちゃん、ありがとう。

今のこの気持ちを忘れないようにしよう。

例え、育児や家事に追われたとしても、しゅんちゃんが大好きって気持ちは、永遠に変わらないよ。


しゅんちゃん、ずーっと、ずぅーっと大好きだよ。



─── Fin. ───


この作品は『幸せな夜更け』と対になってます。
ぜひそちらもご覧ください。

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楽しみにしてます。

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この作品は、コンテスト当日14時に発表されたテーマ《10年前/10年後のキミへ》を元に、当日深夜までに1000字以内のSSを投稿するというスピード勝負のコンテストに応募した作品です。