気まずい空気のまま、悠理と別れた。
 悠理、どうしちゃったんだろう・・・。

 「はぁぁ~・・・」
 「真紘、おっきなため息!どうしたの?」
 日葵と二人で帰り道を歩く。
 こらえきれずに出てしまったため息に日葵が突っ込む。
 ・・・日葵に話してしまおうか。
 何か、アドバイスとかがもらえるかも。
 ・・・いや、やっぱりそれはだめだ。
 自分のことを周りにペラペラ喋られるのは誰だって嫌なはずだ。
 悪い考えを追い出すように頭を振る。
 「あー・・・、いや、なんでもないよ」
 曖昧に笑ってごまかしておく。
 「?変な真紘!・・・じゃあ私、こっちだから。バイバイ!」
 「また明日」
 「うん!また明日ねー!」
 大きく手を振りながら、日葵は左の道へ歩き出した。
 一人で、右の道を歩く。
 日葵がいなくなったとたん、静かになった。
 気分も、重くなる。
 ・・・悠理と、もう前みたいにはいられないのかな・・・。
 そんな考えが頭をよぎって、柄にもなく泣きそうになってしまった。
 改めて、自分の中の悠理の大きさに気づく。
 「・・・ぇ。そこの貴方」
 もう一度、小さくため息を吐いた。
 「ねぇ、貴方!」
 「はいっ!?」
 後ろから急に肩を掴まれて、変な声が出てしまった。
 ・・・誰だろう?
 不思議に思って振り向く。
 「・・・・・・!?」
 「この間、悠理と一緒にいたわよね?」
 私を呼び止めたのは、予想だにしない人物だった。
 「悠理のお母さん・・・?」
 「貴方、悠理の彼女かしら?」
 「・・・仮にそうだったとして、貴方に何か関係あるでしょうか」
 彼女の質問の本意が図れず、警戒しながら低めの声で返事をする。
 「立ち話もなんですし、近くの喫茶店に入りましょう」
 「え・・・!?ちょ、ちょっと!」
 強い力で腕を引っ張られる。
 「離してください!」
 「・・・・・・」
 叫んでも、立ち止まる様子は一向にない。
 人の話を聞かないところは悠理と似てるな、あぁもう!

 道行く人たちに不審そうな目で見られながらも、悠理のお母さんは無理矢理私を喫茶店まで連れてきた。
 「で、こんなことをして何がしたいんですか」
 「・・・私の名前は乾樹里。悠理から聞いてるとは思うけど、あの子の母親よ」
 「・・・・・・」 
 『研修中』と書かれた札を胸に付けた店員さんが運んできたコーヒーを樹里さんは飲む。
 「・・・質問の答えになってませんけど」