強引な無気力男子と女王子

 うっわぁ・・・・・・。
 思わず声が漏れそうになって、慌てて口を手で塞いだ。
 眼鏡を貰うために顔を上げたおかげで、長い前髪が横に流れ目の前の子の顔が露わになる。
 一言で言うと、美少女。
 超が付くほどの。
 おまけに、しゃがんでいるせいで上目遣いになっている。
 本当に男子ですか?と疑いたくなるぐらい。
 普通の男子なら、相手が男と分かっていてもクラッとくるだろう。
 それぐらいの容姿を目の前のアリスは持っていた。
 でも、こんな子うちのクラスにいたっけ・・・?
 これくらいの美貌を持っているんだったら有名になってそうだけど。
 あ、普段は眼鏡をしているのか。
 「あの、眼鏡返してくれませんか・・・?」
 「あ、ああ。ごめん」
 すっかり忘れていた。
 急いで眼鏡を手渡す。
 アリスはペコ、と小さくお辞儀をして眼鏡をかける。
 「ありがとうござ・・・えっ」
 「えっ」
 眼鏡をかけたことによって私が誰だかわかったのだろう。
 アリスは私と目が合って固まった。
 同時に私も固まる。
 「やややややや、柳井さん・・・!?」
 「歩夢くん!?」
 眼鏡をかけたアリスは、歩夢くんだった。
 一番予想もしていなかった相手に私は驚きを隠せない。
 お互いが固まっているから、しばらく目が合い続ける。
 「え、えぇぇぇえ」
 意味不明な言葉しか発せない。
 突然、不自然に歩夢くんの顔が赤く染まりだした。
 「ああああああああ、あの!!」
 「・・・・・・?」
 噛みすぎなくらい、歩夢くんは次の言葉を話すのに手間取っている。
 「ごめんなさい!」
 「え、えぇ!?」
 勢いよく歩夢くんは頭を下げる。
 私はなんで謝られたのかもわからずに、右往左往する。
 はたから見れば、本当に滑稽な様子だと思う。
 「あ、歩夢くん。とりあえず顔を上げて。あと、どうして謝るの?」
 「ぶ、ぶつかってしまって本当にごめんなさい」
 「あれは私が悪いから仕方ないよ。私こそごめんね」
 もう一度頭を下げた歩夢くんに戸惑いながらも、謝る。
 どこかホッとした様子で歩夢くんはやっと、頭を上げた。
 「あと、一つお願いしていいですか・・・?」
 「何を?」
 「僕の容姿について、他の人に言わないで秘密にしといて欲しいんです」
 「え?」
 すがるような瞳で、歩夢くんは私を見る。