強引な無気力男子と女王子

 サンダルも履かずに歩いていると、足に直に砂の熱が伝わってくる。
 サンダル履いてくるべきだったかな・・・。
 なるべく日陰のところを探して歩く。
 やっぱり海はいいな〜。
 風が気持ちいいし、そこにいるだけで普段よりテンション上がるし。
 ぶらぶら歩いていると、連音さんの姿が見えてくる。
 「お〜い、真紘〜!こっちこっち!」
 向こうも私に気づいたらしく、ブンブン激しく手を振る。
 「あれ、真紘、水着持ってきてたの?」
 「!」
 連音さんがいち早く私の姿に気づいて、首をかしげる。
 やっぱり、ラッシュガードを着ていても、水着だってことはわかるか。
 「いや〜、まあ、なんというか、その」
 曖昧な返事を返す。
 ビキニを身に着けているなんてバレたら腹黒の連音さんはさぞ面白がることだろう。
 絶対にいうもんか!
 「学校のスク水ですよ、スク水。もしかしたら海に入りたくなるかもしれないと思って」
 「あーね、スク水ね」
 特に疑う様子も見せない連音さんの言動にホッと胸をなでおろす。
 そういえば、他のみんなは?
 キョロキョロあたりを見回す私に気づいて、連音さんが「もう少し先の海で遊んでると思うよ」と私が来た方向の逆側を指さす。
 「せっかくだし、行ってきたら?バーベキューも、あと一時間後ぐらいだし」
 「一時間後?」
 もう十二時回ってるよ?
 なんでまたそんなゆっくり。
 「はしゃいだ龍羽が、持ってきていたお菓子全部食べて、お腹空いてないんだって。今、お腹を空かせるためにも遊んでる」
 「あ〜、なるほど・・・」
 遠足気分の小学生か、龍羽は!
 「ちょっと行ってきます」
 「オッケー」
 連音さんに見送られて、私はその場をあとにした。

 数分歩いた先に、みんなはいた。
 海に入って、泳いだりして遊んでる。
 ワイワイワイワイ楽しそうだな。
 千晴くんは、砂浜にレジャーシートをひいて、その上にちょこんと座っている。
 私もその隣に腰をおろした。
 「あ、真紘」
 「千晴くんは泳がないの?」
 「うん。水が苦手で」
 「そっか」
 「真紘は?」
 「私は、カナヅチなの。水は平気なんだけど、泳ぎが苦手で」
 「真紘にも苦手なことあるんだ」
 「私だって人間だよ?不得意なことの一つや二つあるって」
 「そうだね」
 いつもの会話のはずだけど、なんとなく千晴くんが上の空な気がしてそっと隣を見る。