強引な無気力男子と女王子

 「あっま・・・」
 「見てるこっちまで恥ずかしくなるわ・・・」
 「・・・・・・」
 みんなのボソボソとした呟きが耳に入る。
 そこで私の羞恥心は最高潮に達す。
 恥ずかしすぎて、顔あげれないよ・・・。
 「は〜い、真紘をいじめるのもそこまでね〜。とっとと撮影終わらせて、海で遊ぶよ〜」
 連音さんがパンパンと手を叩いたのを合図に、私達は各々撮影をの準備に向かった。

 「なんだ、これ・・・」
 大したトラブルもなく撮影は無事終了・・・したかに見えたのだが。
 私の部屋で、事件は起こった。
 衣装から私服に着替えようとリュックサックを覗いたのだが、そこには私が着ていた服はなく。
 「黒ビキニ・・・?はぁ・・・?」
 スタイルのよいお姉さまが着るような真っ黒のビキニが入っていた。
 状況が理解できず、しばらくビキニを持ったまま固まる。
 ・・・間違いない、悠理の仕業だ・・・。
 こんなことをするのはここには悠理しかいない。
 そう確信した私は悠理の部屋へ向かおうとドアノブをひねって押すと・・・。
 「あ、真紘。着てくれた?」
 私が問い詰めようとしていた悠理がそこに立っていた。
 「悠理、アンタねぇ・・・!」
 「ビキニ着てないじゃん」
 「あったりまえでしょうが!」
 悪びれもせずしれっとビキニについて触れた悠理に思わずチョップをしてしまいそうになる。
 「私の服、返して!」
 「ビキニ着てくれたら返す」
 「はぁぁぁあ!?」
 意味分かんない意味分かんない本当に意味分かんない。
 「じゃあ、先砂浜行ってるから。ビキニ着てきてね」
 「ゆ〜う〜り〜!」
 「みんな待ってるし、なるべく早くね」
 それだけいつもの無表情で言い放って悠理は退散してしまった。
 ふっざけんじゃないわよぉお!
 「あ、そうだ」
 悠理の部屋に行って、回収してくればいいじゃん。
 私って、天才。
 でも待って・・・。
 私、そういえば悠理の部屋知らないや。
 悠理の部屋を探すために他の人の部屋に入るのも気が引けるし・・・。
 連音さんに聞けばいいんだろうけど、事情を話したらあの人は面白がってビキニを着るよう勧めてくるだろう。
 その姿が容易に想像できる。
 ・・・さっき、本当にチョップしとけば良かった。

 十数分に渡る苦悶のすえ、私は覚悟を決めてビキニを着ることにした。
 親切なことに、ラッシュガードまで入っていたのでビキニだけの姿より、幾分かはマシだろう、いや、マシなことを願う。