男が指示すると、取り巻きが私の体を抑える。
 ジャージのファスナーが下される。
 そして、学校指定の体操服が覗く。
 「離せ!離せっつってんの!」
 「余裕もなくなってきたみたいだなぁ?」
 男がそう言って、また仲間に指示を出すと、仲間のうちの一人がビデオカメラをセットする。
 「やめ、て!やめてよ!」
 私は必死に声をあげるが、男達の動きは止まらない。
 男が体操服を捲り上げる。
 露わになる、下着。
 「なかなかデカいじゃねえか。王子様には不必要なんじゃねえの?こんなもの」
 そう言って、男たちは声をあげて笑った。
 「大人しくしてたら、せいぜい気持ちよくしてやるよ」
 「やめて!止まってよ!」
 ガアン!!!!!
 私の声と、何か硬いものを蹴破ったような音が重なった。
 倉庫内に、外の街灯の光が差し込んでくる。
 「ゆう、り‥‥‥」
 そう言った私の声は震えていて。
 私を見たアイツの目は見開かれた。
 「‥‥‥何してんだ、お前ら」
 いつもと違う、低くて冷たい悠理の声に驚く。
 「何って、お楽しみ中だけど?瀬戸も混ざるかあ?」
 そう言って下品に笑う男達。
 ‥‥‥悠理には見られたくなかった、こんな姿。
 情け無い姿。
 でも、助けてほしいという気持ちが勝って。
 気づけば私は叫んでいた。
 「悠理‥‥‥!助けて‥‥‥!!」
 私が叫んだのと同時に私にまたがっていた男の体が吹っ飛ぶ。
 「ゲホ、ガホッ‥‥‥。何すんだ、テメェ」
 「それはこっちのセリフ。何してんの、お前」
 悠理は男を冷たく見下ろす。
 「ちょっとそこの女が調子に乗ってたから、懲らしめてやっただけだろ?何をそんなピリピリしてんだ」
 「は?」
 悠理が男を鋭く睨む。
 そして、また男を殴ろうとしたその手を
 「悠理!」
 私が掴んだ。
 「真紘、離して」
 「っ、嫌だ!」
 私は首を振る。
 そして、素早く床に落ちていた自分のジャージを拾い、震えが止まらない体に鞭打って、悠理を連れて倉庫を飛び出した。

 走って、倉庫からだいぶ離れて。
 気づけば、足がガクガクに震えて走れなくなっていた。
 「‥‥‥なんで止めたの」
 「っだって、あんな奴らのために悠理が手を汚すことないじゃん」
 少しでも自分を強く見せたくて、笑いながら言う。
 すると、悠理はもう何故止めたかの質問はやめて、代わりに私を抱きしめた。