「え、ちょ、ぎゃ!?」
 急に瀬戸悠理の腕が伸びてきて、布団の中に連れ込まれたせいで何とも色気のない声を出してしまう。
 ‥‥‥えっと、これはどういう状況だろうか?
 今、私のおでこに当たってるのは意外としっかりした瀬戸悠理の胸板で。
 そして私の背中には瀬戸悠理の両腕が回されてる。
 ‥‥‥私、抱きしめられてる!?
 「私、抱き枕じゃない!離して!離せよ!」
 必死に身をよじるがガッチリとホールドされていて抜け出せない。
 なんで寝てるのにこんなに力が強いんだ!
 「離せ!離せよ!」
 大声で叫ぶもあまり効果がないようだ。
 いや、でもこれは困る。
 どうやって脱出しようか。
 そう思案していると。
 「ゆ〜う〜り〜?」
 突如、誰かの低い声が聞こえて固まる。
 え、この状況見られたらヤバくね?
 多分私の体はすっぽり布団に入ってて声の主からは見えてない。
 もしこの状況下で布団をめくられたら‥‥‥!
 どうか布団をめくりませんように‥‥‥!
 そんな私の願いも虚しく。
 「いい加減起きろ!!!」
 怒鳴り声と共に布団が勢いよくめくられる。
 ああ‥‥‥終わった‥‥‥。
 瀬戸悠理を起こしに来たのは香くんで。
 布団の中から出て来た私の存在に目を丸くしている。
 たっぷり間をあけたあと。
 「何してんだ二人共ぉぉぉぉぉお!!」
 案の定香くんの怒声が部屋中に響き渡った。

 「で、何してたんだ?」
 香くんに連れられて寝室からリビングに逆戻り。
 仁王立ちする香くんの前には正座して縮こまる私と寝ぼけてる瀬戸悠理。
 何呑気にしてんの!?
 アンタのせいで私怒られてるじゃん!?
 ああ、せめて龍羽が居てくれたら‥‥‥。
 龍羽は今撮影しているみたいでリビングには居ない。
 只今リビングに居るのは私と香くんと瀬戸悠里とこちらを見もせずにスマホをいじってる千晴くんだけ。
 うう‥‥‥沈黙が気まずい‥‥‥。
 「あ、あの‥‥‥。ごめんなさい」
 何が悪いのかは分からないけど。
 相変わらず瀬戸悠理は寝ぼけてるし。
 謝ってしまう。
 「何に対してのごめんなさいだ?」
 香くんは明らかにイラついている様子。
 再び沈黙が始まったその時。
 ガラッと音がして扉が開いた。
 「じゃ、そろそろ撮影はじ‥‥‥」
 沈黙を破るようにリビングに入って来たのは、連音さんだった。
 「‥‥‥!!!」
 目で助けを求める。
 ところが。
 「‥‥‥ふっんふっふふーん♪」