「「「「「「ええええええぇ!?」」」」」」
 「‥‥‥」
ダラダラと嫌な汗をかく。
 土下座をしたまま、顔を少し上げる。
 そこには、信じられないという表情で固まっている六人がいる。
 口をあんぐり開けていて、間抜けな顔をしているが、それでも元の顔の良さはなくならない。
 やっと我に返ったようで、それでも口をパクパクしている。
 まるで陸にあげられた魚だ。
 「う、嘘、だろ?」
「‥‥‥本当です」
龍羽さんが質問してくる。
 「胸ねぇじゃん!」
失礼な!
 「さらし巻いて隠してます」
イライラをおし殺して静かな口調で答える。
 「わざわざ男装する理由がないだろ?だよな?な?」
後ろに立つ五人に同意を求めるように言う。
 後ろの五人も喋りはしないがコクコクと首を縦に振る。
 「‥‥‥親友をナンパから護衛してました」
 そこまで言ったのにまだ信じられないという表情をしている六人を見ているとなんだか笑えてくる。
 私の男装はそこまで凄いのか。
 もうこれから男子として生きていこうかな。
 とはいえこの六人の反応が失礼に思えて少しむっとしながら財布から保険証を取り出してズイッと突き出す。
 「柳井真紘‥‥‥、性別、おん、な‥‥‥」
呆然とした口調で千晴さんが読み上げる。
 「本当に女‥‥‥」
そこまでショックを受けられたという事実に私もショックを受ける。
 私は一欠片も女に見えないのか。
 そんなショックなことだった?
 「な、なあ、女ならモデルにはならねぇよな?じゃあ見送るぜ」
龍羽さんが目を忙しなく動かしながら言う。
 でもなあ‥‥‥それだと映画館代払ってもらえないしなぁ。
 諦めるしか無いのか‥‥‥。
「モデルできないんですよね‥‥‥?お騒がせしてすいませんでした。いても邪魔になるだけなので帰らせてもらいます‥‥‥?」
 何故か語尾が上がり口調になるが誰も突っ込まない。
 何も反応がないということは肯定ととっていいのだろうか?
 おそるおそる立ち上がり出口を目指す。
 誰も反応せずに、ただただこちらをボーッと見ている。
 居心地が悪い。
 ゆっくりゆっくり出口に向かうと、グンっと後ろに急に引っ張られる。
 「え、うわ、ちょ」
 突然のことになす術もなく、意味不明な言葉を発してドスンと尻もちをつく。
 下の階に迷惑じゃないかな?
 そんなに私重くないか。
 というかすっごく痛かったんですけど!
 誰だよ‥‥‥。
 恨めしげに後ろに立つ人物を見上げる。