だけど、いまならわかる。惹きつけられるものが確実にあって、磁石のように引き寄せられていたのだとわかる。




『深入りはするな』
『好きになるな』



ルールというのかよくわからないけれど、彼に言われたことだった。深入りなんてする気もないし、好きになるなって、私が好きになる前提で話進めるし、癪に触ったけど、黙っておいた。

名前も歳も、どこら辺に住んでいるのかも知らないし、昨日何をしていたかも、どうして私にそんなこと頼んだのかも何も分からない。

彼の情報は一切ない。



そんな彼に「いいよ」と答えてしまった私も相当おかしいと改めて思った。