「大切な人がいなくなる悲しさわかるでしょ?愛結ちゃんにとって蒼太が大切だったように、俺もふたりが大切だから同じ思い、2回させないでね」
「ああ、もう泣かせないでください……」

「やっぱり愛結ちゃんって泣き虫なんだ」




そのまま顔をあげようとしたけれど、「あ、いまはあげなくていいよ」と麗音さんのもう片方の手が阻止をした。

泣いている大人の人を見るのは初めてだった。




「麗音さんも泣いてるじゃないですか」
「泣いてないから」

「大人も泣くんですか?」
「ふたりは大人は強いって思ってたと思うけど、大人も弱いよ。子供より先にいるだけで何も変わらないんだよ」





私は、"大人は強い"からなりたかったけれど、"弱い私のまま"大人になるのは嫌だった。

だから未来を思い描けなかったし、進路なんて見てもなかった。