俺の前では泣いてもいいよ。【修正中】

距離は離れてしまうけれど、それを悲観的に捉えている人はいないだろう。


私たちには距離と時間が必要だ。いま話したから、いま解決なんて、簡単な問題じゃない。

ひとりになって、自分と将来と向き合う必要があると思うから、私はこれでいいと思った。



変わらないものもちゃんとある。それは、私のお母さんもお父さんもお兄ちゃんも紛れもなく家族で、血を分け合った家族であるということだ。

だから家族のためにもこの選択は正しかったと思う。



傷は消えなくても、許せないことがあっても、前を向いて歩いていきたいってそう思うのに、いつも蒼太くんが私の心にいるのは事実だ。





卒業式を終えて、教室に戻って、先生の挨拶を聞いて、最後の号令をして、私の3年間が終わった。



「さようなら」

先生の声に生徒の声が重なって、余韻がどこか遠くまで響き渡った。



3年生は両親と、そして友達と写真を撮って、端っこで泣いて、笑いあっていた。最後を惜しむように泣いて、笑って、大切な高校生活を振り返っていた。



ここを初めて通ったとき、私の周りはたくさんの人が溢れていて、いつも隣で笑っている友達が、私に笑顔で声をかけてくれる友達がいたのに、今日「またね」と話しかけてくれる人は僅かだった。