夢の中でいつもきみに会う。私は泣きながらきみに手を伸ばすれけれど、きみは私の手を掴むことなく消えていく。きみがいなくなった日から私は泣いていない、きみがいないこと私はまだ受け入れられていない。





「あ」


画面いっぱいに広がった桜の花を見て私は声を上げた。私だけが前に進んでいいのだろうか、その気持ちが先に来て私は心の底から喜んでいない。

私は鞄を持って部屋を出る。いつも通り静かなリビング、それだけじゃなくて私の隣の部屋にも誰もいない。





私だけがまた置いていかれてるんだなあ。合格を一番に知らせなきゃいけないのはきっとお母さんだろうけれど、いま家にお母さんはいない。

いつも隣の部屋にいたお兄ちゃんもいない。





古くなったローファーを履いて外に出ると春に近い日差しが私を照りつけた。三寒四温というのだろうか、まだ十分寒いけれど、時折春の訪れを感じる季節になった。