俺の前では泣いてもいいよ。【修正中】

一瞬耳を疑ったけれど、反芻して、彼の言葉を理解した途端、また視界が滲んでしまった。そんな私の腕を引いて、傾いた私を自分の胸におさめる。

彼の胸が私の顔に当たって、私はあの日のことを思い出す。鼻をかすめるシトラスの香りが私たちが過ごした終夏、秋日、初冬、そしてもうすこしで迎える春陽を運んでくる。



私は見られないように、袖で目元をゴシゴシ擦ったけれど、「目腫れるぞ」と言った蒼太くんは私の目元を優しく拭って、彼の指を私の涙が濡らす。




「泣いていいよ、俺がいるから」
「……そう……たくん」

「蒼太くん……っ」
「ん?」



ずっと前から思っていたことを言葉にするのは躊躇われたけれど、いざとなると逡巡が消えて、私は声に乗せていた。




「離れないでほしい……私、ずっと蒼太くんのそばにいたい」

目の前にある肩に顔を埋めるとぎこちない手つきで細い髪を撫でられる。蒼太くんの指先が私の髪を伝って、髪に神経は通っていないはずなのにむず痒くて、恥ずかしくて、熱くなる。