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私は帰り道、いつも通り振舞っている蒼太くんの腕を掴んで自分のほうに引き寄せた。
大胆すぎて恥ずかしいのに、私を不思議そうに見つめる蒼太くんが気になってもっと体温が上がる。
「私よりずっとつらかったよね、気づけなくてごめんね、蒼太くん」
「どうした?」
「いや、蒼太くんに比べたら私は……恵まれてたんだなって思って」
「比べなくていいだろ。お前も俺もつらかった、それでいーじゃん。俺はいいけど比べるのは相手に失礼だぞ」
蒼太くんの言葉が有り得ないほど私の心に響いて驚いたけれど、すこし考えて理由がわかった。
昔、お母さんに言われた「愛結より不幸な人はたくさんいるんだよ」って言葉がずっと私の中にあって、人と比べないでほしくて、天秤にかける意味がわからなくて、私だってつらいのにその気持ちを消されてしまって、苦しかった。
「苦しい」と思うことも、「つらい」と思うことも許されないような気がして、私は自分の気持ちを消すようになったことを思い出す。
「あの家族楽しそうだね」と言えば「甘えないの」と言われて、「つらさ」は比べるのに、「楽しさ」は比べない。
それが子供ながらに傷ついていた。
私はずっとこの苦しい感情を認めたかった、何も変わらなくても自分の中にある感情を認めたかった、それだけでよかったのだといま気づく。
彼の一言にはっとさせられることは多々あったけれど、今日もはっとさせられた。



