冷気に晒されている顔は真っ赤に染って痛くて、ちょっとでも温まるようにマフラーに顔を埋めて歩く。

この制服を着てこの冬を過ごすのは最後だ。ピンクだった木々が緑色に変わって、黄色に変わって、なにもなくなって、そしてまたピンクに染まる。





夏バテもなくなるし、貧血症状も和らぐから夏よりは冬のほうがすきだけれど、今年の冬は今までにないほど憂鬱だった。寒波が訪れるからじゃないし、手が冷たくなるからじゃない。



重い足を機械的に動かして学校に向かって、教室に入るとピリッとした空気が刺さる。

12月、3年生のほとんどは受験モードだ。前までは喧騒が広がっていたけれど、いまは静寂に包まれている。


一番後ろの席に腰を下ろしてまわりを見渡すとみんなそれぞれ参考書と向き合っている。