昔だから慣れているし、変に空気を読んでしまうのもいま始まったことじゃない。

ドキドキしながら、なんとか声をかける。




「私、今日買い物行こうか?」
「なんかなかったっけ?」

「冷食と野菜がなかった」
「じゃあ、お願い」





仕方のないことだと思う。昔の記憶が蘇るものの育ててもらっている立場であることには変わらないし、私が"いい子"になって精神的に落ち着いてる今は穏やかに過ごせるだろう。

平和が保てるに越したことはないと思う。





外に出ると寒さが皮膚を刺して、朝の冷気が私を包み込む。あたりは霧だらけで前がよく見えなくて、息を吐くと真っ白くなった息が空気に消えていく。

季節は冬。こないだまでは歩いただけで暑くて、このまま倒れてしまうんじゃかって思っていたのに、いまは外に出ただけで手がかじかんで動かなくなるほど寒い。