俺の前では泣いてもいいよ。【修正中】

ドラマを見るからと言って電車に乗り込んだ咲優に手を振って、私もホームへと向かう。

家に着くとまたひとつの靴があって、見慣れた光景だけれど、今日もお母さんの説教が始まるのかと思うと一気に憂鬱で。



自分の靴を端に揃えて、リビングに行くと珍しくお兄ちゃんがいて、出くわすのは久しぶりだし、目が合うのも久しぶりだから緊張した。

お兄ちゃんも私を簡単に見透かすから、じっと見つめられるのは苦手だ。


私から先に目を逸らして、部屋に入る。なんとなく何を言っても無駄だと思ってきたし、私も人のこと言えるほど立派なことをしているわけじゃないと気がついた。



私たちの関係が戻ることはあるのだろうか。私と両親は元々関係は良くなかったけれど、お兄ちゃんとは小さい頃から仲が良かった。

同じ家に住んでいて、ほぼ隣同士にいるのに私たちの間には大きくて頑丈な壁がある。



離婚をきっかけに変わってしまったお兄ちゃん、大学生になってまた変わってしまったお兄ちゃんと私がまた話せる未来はあるのだろうか。

そういう未来は想像しているだけじゃ、何も変わらないと知っていたけれど、踏み出す勇気は1パーセントもなかった。