俺の前では泣いてもいいよ。【修正中】

「蒼太くん」
「何?」

「その、ありがとう」
「うん、お礼はその歪な顔を見せないことで返してな」




私から身体を離して、両腕を空にあげた。そのまま芝生の上に寝転んだ蒼太くんは意地悪そうに口角を上げた。

何も言い返せないのはわかっているけれど、なんとなく気に触る。





「そーいえば俺最初と印象変わった?」
「ちょっと変わった。思ったよりというか、かなり大人だし、普通の人だった」

すこし雰囲気も変わって、優しくなった気がするとは言わなかった。


「あれさ、演技だったんだよな」




え、と素っ頓狂な声が洩れて、大きく響く。「めんどくさいこと言ったらすぐやめるのかと思ったら意外と親切だった」と平気な顔をして言っている蒼太くんを睨みつける。



「なにそれ、試したってこと?」
「そう」



なんとなく彼に疑問を抱いていたけれど、やっと解決した。本当は怒ろうと思ったのだけれど、心の底から怒っているわけじゃないし、私も蒼太くんを疑っていたのだからお互い様だ。



「私も変わったかもしれない」
「うん」

「でもなんか試されてたのは嫌だなあ」
「俺はお前と違って八方美人じゃないから。八方美人は好かれもしないし、嫌われもしない。それは嫌だからなあ。それで嫌われたらもう近づかなきゃいーし」



色を持つと嫌われることもあるし、好かれることもある。それを恐れている私と恐れていない彼の"共通点"はあるのだろうか。

それを知るのはもうすこし後だった。