私は、時間外受付で名前を言って、いつもの診察室に向かった。

コンコンコン
ノックをすると、中から少し機嫌が悪そう声で

「はい、どうぞ?」
と、唯斗君が言った。

「失礼します」

「そこ座って、楽しかったか?遊園地」

「えっ、あぁ、はい」

「そう、良かったな...咳はもう出てないみたいだな」
そう言いながら聴診をした。

「はい」



「口開けて、喉痛そうだな」

「叫びすぎて」

「はしゃぎ過ぎ」

そう言われ恥ずかしくなって、無言で俯いた。

「まぁ喉は、のど飴舐めたらいいとして、
夜は、喘息出てるか?」

「昨日は、出なかったです、でも、一昨日は、出ました」

「じゃあ、吸入薬だけ出しとくから...
2週間後の金曜、16時30分に予約入れとくから、また来て」

そう言い終わりに、私の右手に触れ何かを渡してきた。

右手を見ると、のど飴とそれから...

「えっ」

「掃除と夜ご飯よろしく!
俺、あと1時間ぐらいかかるから...」

「えっ、これ」

「合い鍵、無くすなよ?」

「あっ、はい...
あの、1つ聞いてもいいですか?」

「うん、なに?」

「お味噌汁、赤出汁派なんですか?」

「えっ?
あぁー、なんでもいい、美味しかったら」

あっ、そういう感じか、と心の中で呟き、無言で会釈をして、診察室を出た。