大学2年になった頃から 

カンナから 時々 電話が来るようになり。


別れた後 初めて カンナに呼び出されたのは

梅雨に入ったばかりの 6月の初め。


” 困ったときは 相談して ” って 俺が言ったから。

俺は カンナを 拒めなかった。


『誰かに つけられてる気がする。怖いから すぐ来て。』

カンナから 電話があった時

俺は 友達と飲んでいた。


慌てて カンナが待つ 駅前のカフェに 俺は 駆け付けた。

中を見回して カンナを探す。

俺を見て 手を振る女性が 目に留まる。


その子が カンナだって 俺は気付かないほど

太って 丸い顔をした カンナが 俺に笑顔を向けていた。


「大丈夫か?」

俺は 精一杯 平静を装って カンナに聞く。

「うん。ここ 人が多いから。ヤバいって思ったのかな。いなくなったみたい。」

「そうか。よかった。送るよ。」


カンナには 高校生の頃の 輝きはなくて。


丸々と太った体…傷んだ髪は パサついていて…

荒れた肌に 厚く塗った化粧が 剥がれ落ちて…


今のカンナを つける人なんて いないだろう。


カンナのアパートまで 並んで歩きながら

カンナは 機関銃のように 色々 喋る。


適当に 相槌を打って 歩きながら

俺は 早くカンナから 離れたかった。


「寄って お茶でも 飲んでいく?」

「ううん。俺 明日 早いから。じゃあね。」


前回よりは 回復していたとしても

カンナは まだ 普通じゃなかった。