タクシーが ホテルに着いたのは 9時半頃。
俺は 真っ直ぐ フロントデスクに行って
「こちらに 泊まっている 町田 葉月を 呼んでほしい。」
と片言の英語で 伝えた。
葉月が 泊まっているか 賭けだったけど。
モニターを操作していた フロントマンは
笑顔で 俺に頷いて 電話を取った。
葉月は ここにいる…
俺は 動悸が激しくなって 足が震えた。
「町田さんは 出かけています。」
フロントマンは 受話器を置いて 俺に言う。
「いつ頃 戻るか わかりますか?」
俺の質問に 彼は 首を振った。
お礼を言って フロントデスクを離れ。
俺は ソファに移動して
入口が 見える方を向いて 腰を下ろした。
葉月は ここにいる…
今は いなくても ここに 戻ってくる。
やっぱり 葉月は ここに来ていた。
俺と 一緒に来るはずだったのに…
1人で こんな遠くまで 心細かっただろう。
しかも このホテルに 泊まっていたなんて。
俺が ここを 褒めていたから…
葉月は どんな気持ちで ここを 予約したのだろう。
葉月のことを 思うだけで
俺は 涙が滲んでしまう。
葉月… 早く 戻ってきてくれ。
元気な姿を 見せてほしい…
俺は 入口から 目が離せなかった。